イルカ研究所
MISSION 12、何故、イルカを海豚と書くか
イカ
あれ?この紙に書いてあるのはなんですか?
タコ
あぁ、日本語という人間の使う文字だ。

海に物を捨てる迷惑野郎が捨てていった本を
解読し、一部切り取ったものだ。
 
海の豚と書いて、イルカと読むんだよ。
イカ
ブタ…?ブタって陸にいるピンクの哺乳類ですよね??
似ているようには思えませんが
タコ
イルカの鳴き声が豚の鳴き声に似ているからだそうだ。
イカ
そうなんですかぁ。参考になるな。
 
海豚の下に書いてある文字は、イルカとは微妙に
違うようですが、なんて読むんですか先輩。
タコ
フグ。河の豚と書いて河豚だ。
イカ
えぇ?!フグに鳴き声なんてないでしょう
……人間って変な生き物なんですね;
 
 ** **
イルカ研究所
MISSION 13、帰還 ― 任務終了

あの軟体生物共は、黙るということを知らないのか。
 
様子を覗ってから何時間も過ぎているというのに
疲れて静かになる気配どころか、次第にテンションが
上がっているようにしか思えない。
 
静かだった研究所内が少しずつ
人の気配と共に賑やかになってきた。
このままでは、見つかる可能性が高い。
 
一旦引こうと思い、立ち去ろうとしたその時。
 
「おい!お前…」
 
背後から声をかけられた。
にこやかに振り向き職員を装って
やり過そうとしたが、声をかけた男の背後から
警備員らしき男が泳いでくるのが見えたため
とっさに地面を蹴り泳ぎ出す。
 
警備員は大きく黒い体を揺するように泳ぐ。
体の大きさの割に動きは素早い。
 
大きな口から覗く鋭い歯をガチガチしながら
静止をかけてくる。
 
「き、君、待ちなさいっ!!」
 
全くもって逆効果である。
(捕まったら最後だ!)
 
恐怖に全身が震えそうになるのを必死で抑え泳ぐ。
何度経験しても怖い物は怖い。
 
どうやら、さっきの声をかけてきた男が事前に
警備員に連絡を入れていたようだ。
 
迂闊だった、一般人に目撃されているのに気が付かないとは!
 
 
俺は事前に頭に入れていた周囲の見取り図を思い出しながら
警備員の通れない隙間をぬって距離を少しでも稼ごうとする。
 
しかし、ここは相手の庭も同然。公式にはない抜け道を通って
稼いだ距離を縮められてしまう。
 
何度も追い詰められ、イルカ研究所職員にも邪魔されたが
何とか追いつかれずに拓けた場所に出られた。
 
遥か上には海面が見える日の光の射す場所。
 
俺は残り少ない体力を振り絞り、海面を目指し急浮上を始めた。
浮上する俺を見て、やっぱり警備員も逃すものかと追ってくる。
 
後ろを振り向いて距離を確認することもできず
必死になって、たっだがむしゃらに海面だけを目指す。
 
だんだん縮まっていく警備員との距離。
海面がいつもよりも遠く辿り着くのを拒まれているようにも感じる。
 
相手の歯を鳴らすカチカチと言う音と、
泳ぎによって生み出された水流を近くに感じ。
 
「ダメだ!」と思った瞬間
 
俺の目前には、目に沁みるような明るく青く澄み渡る大空と
何処までも続く地平線、そして飛び散りキラキラと輝く海水が見えた。
 
俺は風を切り空を飛ぶかのように上空に向かい
ジャンプを繰り返して泳ぎはじめる。
背後に迫っていたはずの警備員の気配が遠ざかっていくのを肌で感じた。
 
ここまでくれば大丈夫。
警備員の気配どころかイルカ研究所から大分離れた場所にいた。
 
如何に警備員のヤツが”海のギャング”鮫であろうと、俺には敵うまい。
海面に飛び出し1回で、2〜300mの距離を飛行するのだ。
水中を泳ぐしかなく、飛び上がれても3mの高さを猛スピードで
滑空する俺とは勝負にもならないだろう。
 
そう俺は飛魚。翼のような大きな胸ビレ持ち空を愛する魚。
 
臆病な俺が諜報部でもやっていけるのは、
この逃げ足の速さがあるからだ。
 
安心した所為か何かが胴に引っかかる感触がした。
視線を向けてみると血が微かに流れ出ているのが見える。
警備員の鮫が俺を噛もうとしたのだろう。
 
たいした怪我ではないが、手当てをした方がよさそうだ。
本部へ帰還する道すがら手持ち無沙汰にイルカに思いを馳せる。
 
人間どころか人外すらも魅了するイルカ。
追い求める者が多いのにも関わらず。イルカは、いまだ謎に包まれている
そしてこれからもイルカに魅了されるものは後をたたないのだろう。
 
「謎の多い女ほど惹かれる」ってか。
 
苦笑をもらし、俺は帰りを急ぐ事にした。
早く帰って彼女に約束を破ったことを謝らなければならないのだ。
 
 
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